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『AKB商法とは何だったのか』発売記念!
さやわか(著者)×ヒラノノゾミ(BiS)対談

ヒラノノゾミ さやわか

Part.2
以前はだいぶ戸惑いを感じてて、秋田から上京したばっかりの田舎者がこういうことをやってていいのかな?って





さ 活動を続けていくうちに、楽しくはなりましたか?

ヒ なりましたね。以前はだいぶ戸惑いを感じてて、秋田から上京したばっかりの田舎者がこういうことをやってていいのかな?って。自分のスキルのなさにもすごく絶望していて。

さ そうなんですか?

ヒ Kポップが好きだったので……。

さ ああそうか、本格派がよかったわけですね。

ヒ 事務所でちゃんとレッスンを受けて、その上でデビューするっていう子たちにすごく憧れていたので。

さ 違いましたからね。

ヒ だいぶ違いましたね。

さ (笑)。当時のインタビューでも手作り感があるというか、「自分たちで振り付けを考えて、踊れなかったら変える」みたいな話をしていましたよね。

ヒ 今はサキちゃんが、ももいろクローバーさんの振りコピユニットをみんなでやっていた子なので、フォーメーションを考えてくれたり。ただ6人は偶数で結構難しいので、今後また変化するかもしれないです。

さ 活動していて、充実感はありますか?

ヒ ありますね。

さ よかった。いやあ、それはよかったです(笑)。

ヒ なんとか(笑)。バンドさんとの対バンも、あとフェスにも出させていただいたり。

さ そうだ、大阪のサマーソニックに出演するんですよね。

ヒ 2日目のオープニングアクトです。おかげさまで……。

さ いやあ、よかったですね! メンバーが電話して「サマソニに出してください」って言ってたグループですからね。

ヒ あの時はもう、みんなも無茶なのはわかっていながらやっていたので。

さ うんうん(笑)。

ヒ 願いが叶いました。

さ よかったですね。でもサマソニにBiSが出たら、ウケると思いますけどね。ロック的なグループなので。

ヒ でも、いつか生歌でやりたいです。やっぱりかぶせだと、昔のメンバーの子の声とかが聞こえて……ファンの方も複雑だと思うので。

さ なるほど(笑)。

ヒ あと自分の2年前の声を聞いて、ああイヤだなと。

さ イヤだなって思うこと、あるんですか。

ヒ 一番最初に配信限定で出した『太陽のじゅもん』っていう曲があるじゃないですか。あれとか、今も歌えてないんですけど、今以上に歌えてなくて。

さ あの曲の声は、いかにも新人アイドルらしい感じは出てますよね。

ヒ ありますね、あの時はそうでした。今はどんどんイカつい方向にいってるから。

さ 確かに。そういうイカつい方向性って、イヤになったりしないのかなって思うこともあるんですけど、どうですか? 今さらですけど「こんなのアイドルじゃないや」って思うことはありますか?

ヒ Perfumeさんたちもテクノで、ブレイクしていった方たちなので、私たちもこれはこれでありなのかなと。今はBABYMETALさんがメタルだったり、ラップのlyrical schoolさんとかも同期にいますし。

さ あ、同期なんですね。

ヒ オーディションを開催した日時が一緒なんです。だから完全に同期なんですけど、lyrical schoolさん、新しい子を入れながらも一貫してラップをしてますよね。でんぱ組.incさんとかも含めて、自分たちの周りのアイドルさんが、わりと他のアイドルさんがやらないことにチャレンジしてる方たちなので、あまり戸惑いを覚えなくてよかったのかもしれないですね。

さ なるほど。あとは、ヒラノさん自身がそうやって今のアイドルに対する深い知識があるから、違和感を感じないのかもしれないですね。



曲がいいだけでは、みんな表に全然出て来られないってことなんですよね

さやわか



さ この『AKB商法とは何だったのか』を読んで、よかったら率直な感想をいただけますか。

ヒ 興味深いですね。面白かったです。BiSも載せていただいててよかったなって安心もしつつ。

さ ありがとうございます。読みにくいとか、難しかったみたいなことはないですか?

ヒ 面白かったです。読みやすかったですね。

さ マジすか、よかった。嬉しいです。

ヒ この本を読んで、日本に初めてアイドルさんが出てきた時代から、だいぶ変化してるって感じました。自分がアイドルだっていう自覚がないわけじゃないですけど、その流れに身を置いているのが、ちょっと今でも信じられないんです。

さ 歌って踊っていても、同じ存在のように思えない?

ヒ もっとスキルを上げたいですね。いまだに歌もダンスも上達しなくて、ホントに悩んでいて。

さ そういうのは、かなり気にするんですか。

ヒ 夢に出てきます。

さ あ、そんなに気にするんですね。

ヒ この間も、夢で誰かに対して「私はハモりは出来るからいいでしょ!」って、逆ギレしていて。

さ (笑)。

ヒ 普段からそういうふうに思ってるわけじゃないので、目が覚めたときびっくりして。

さ それは寝言で口に出して言ったんですか?

ヒ 出してないみたいですけど、夢の中で怒ってて、完全に言ってるんですよ。「ハモり出来るんだから、メインのメロディを歌えなくてもいいでしょ」みたいな開き直りだと思うんですけど、そんなこと思ってないのに、夢の中にまで出てきて、びっくりしました。

さ なるほど。この本でもそういうアイドルのパフォーマンス力について書いてますけど、あとは「AKB商法」と呼ばれるモノについて書いた本なんですよね。CDの複数枚販売といったビジネスについては、個人的にどう思われますか?

ヒ やらざるを得ないなとは思います。

さ 今の言い方は否定的なニュアンスというよりも、今の音楽業界でCDを売るためには必要だっていう感じですよね。

ヒ CDを買っていただくために。いろんな人に注目していただかないと、メンバーひとりひとりの個性や、曲の良さにも触れていただけないままなので。ももクロちゃんのあの成功は、すごく憧れるんですけど、ああいうふうに曲をまず受け入れてもらって、その上でメンバーの一人一人の個性を見てもらえたらと思うんです。

さ 逆に言うと、今の時代は曲の力だけではCDって売れていかないということですよね。

ヒ この本を読ませていただいて、そう思いましたね。私もそれは常に考えていたんです。「BiS、曲はいいのに、あと何が足りないのかな、スキルかな、なんだろうな」って。

さ この本は、そういうことを完全に否定してますよね。今の音楽チャートというのは、スキルとか、曲がいいとか、そういうことが必ずしも認めてもらえる場所ではないのだというふうに。

ヒ 今、曲のいいアイドルさんはいっぱいいますけど、それも、みんなやってることですしね。

さ おっしゃるとおりですよね。曲のいいアイドルがいっぱいいるということは、つまり裏を返すと、曲がいいだけでは、みんな表に全然出て来られないってことなんですよね。

ヒ そういうことですよね。一般の方に知っていただくためには……。

さ 何か仕掛けがいるということになっている。

ヒ そうですね。


ヒラノノゾミ

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